「つまんでご卵」の特長
卵の内部の菌が増えにくいので安心して食べられる
何回検査しても、あの恐ろしいサルモネラ菌(S・E)はおろか、雑菌やキャンピロバクターさえ検出されたことがありません。(検査結果は、細菌数300以下CFU/gという最低値で表示されます)
したがって、この卵を夏季に3~4ヶ月室温に放置しておいてもどうもなりませんし、理論的には1年たっても腐らないはずです(1年放置実験は1回だけやってみました。大丈夫でした。もちろん食べる気にはなりませんでしたが)。
ですから安心して生や半熟で召し上がっていただけます。ちなみに表示が義務づけられている「生食期間」は産卵日より冷蔵庫保存で1ヶ月に設定しています。
※以前この項目は、無菌卵と表記しておりましたが、現在の菌検査の方式では、たとえ未検出であっても細菌数300以下CFU/gと表記するようになっております。
基本的に無洗卵である
卵は生まれてくるとき、輸卵管から分泌された粘液で表面が濡れています。産卵後表面はみるみる乾いて薄い膜となり、「クチクラ層」とよばれます。このクチクラ層が、卵に菌が侵入するときの最初の防壁になるのですが、卵を洗ってしまうとこの層は簡単に取れてしまい、卵は最前線のバリヤーを失ってしまうことになります。
市販の卵はほぼ100パーセント洗卵したものです。
「つまんでご卵」は無菌のうえ、クチクラ層もきちんと残っているので、信じられないぐらい日保ちするのでしょう(そうはいっても、早く食べるに越したことはありませんので。念のため)。
ただ、中には地面の上で産んでしまう卵もあります。こういった卵はどうしても汚れてしまっているので、卵表面を流水で洗い流すようにしながら洗卵をしております。
この洗卵済みの卵も、検査をして上記のクチクラ層が残っている無洗卵と同等に菌の検出は無く、安心してお召し上がりいただけます。
緑の農園としては、少しでもリスクを低減するために基本的に洗わず、洗わなければならない卵は洗卵して出荷をしています。(このような卵はケーキ工房や直売店の厨房で優先的に使用はしています)
黄身がつまめる
だから「つまんでご卵」なのですが、少し前まではデモンストレーションの意味しかありませんでした。ところが1998年になって、突然つまむことに意味が出てきたのです。この年、卵によるサルモネラ中毒の増加に危機感を持った厚生省が、中毒予防のための、養鶏家および鶏卵業者向けのマニュアルを出しました。「鶏卵の日付等表示マニュアル」です。生産者や鶏卵業者は、これを参考にして卵の容器にいつまで生で食べられるかを表示しなければなりません。
そのマニュアルの中に「鶏卵を生食できる期限の算出根拠」という項があり、次のように記述されています。
※卵黄膜は保存温度および保存期間と一定の関係で弱化し、一定レベルまで弱化が進むと卵黄成分(鉄、脂質等)が卵白への移動等を起こします。すると、サルモネラ菌がある場合、急激な増殖を起こすことになります。 さらに、卵黄膜が弱化しサルモネラ菌が急激に増殖し始める期間は、保存温度と一定の関係があるとしたうえで、次のような説明をしています。 ※[産卵時のサルモネラ菌は仮にあっても数個程度、その後の一日で十数個程度に増殖するが《※まだ食中毒濃度ではない》そこで増殖は止まる。さらに一定期間を経ると卵黄膜の弱化により急激に増殖する《※食中毒濃度になる》。] 《※早瀬による》
そうです。黄身が(卵黄膜が)つまめるほど強いうちは、仮に卵の中にサルモネラ菌があっても、菌は食中毒を起こすほど増殖することはないのだ、と保証してくれているようなものなのです。ありがたいことではありませんか。「つまんでご卵」は安全な卵なのです。(万が一菌が入っていてもの話です。通常は無菌です。念のため。)
白身が強い
この卵はかきまぜるのに時間がかかる、と文句を言う人がたまにいますが、それが「つまんでご卵」の特長なのです。ゼラチンで固めたような白身を、箸で持ち上げるようにして切ってください。料理の目的に応じた細かさに切るのがコツであり、楽しみでもあります。
卵を割って皿に乗せてみるとわかりますが、白身には2種類あることがわかります。重力に逆らって盛り上がっている“濃厚卵白”と、さらさらした“水様性卵白”です。濃厚卵白が盛り上がっていられるのは、オボムチンと呼ばれる蛋白質のせいです。
黄身と一緒に白身まで持つことのできる「つまんでご卵」の白身は、この繊維がよほど強いものとみえます。そのことは、スポンジ菓子を作ってみるとよくわかります。他の卵を使った場合とくらべて膨らみ方が違いすぎるとのことで、もう手放せなくなっているケーキ屋さんもいるのです。
私たちがこの卵の白身をあわ立ててスポンジケーキなどを焼くとき、レシピどおりの量をあわ立てると、メレンゲがボウルから溢れ出してしまいます。たとえば卵10個分の白身、とレシピにあれば「つまんでご卵」の場合、7個ぐらいが適量ということになります。
卵臭さがない
ストレスのない飼いかたが良いのか、エサのせいなのかわかりませんが、「つまんでご卵」には、卵独特のいやな匂いがまったくありません。そのため、生で食べる卵かけご飯がおいしいのは理解できるところなのですが、驚いたことに焼き菓子やカステラなどを焼いた場合にも、甘く香ばしい香りがはっきりと立ち上ることがわかりました。
なぜでしょう。それは卵臭さを消すための「香料」を、まったく使わなくてもすむからです。そのため、この卵本来のよい香りが甘く立ち上ったのです。以前他のケーキ屋で働いていたうちのパティシエが、レシピに香料が無い、という事に大変驚いておりました。香料に頼らない自然の芳香。これ以上のお菓子があるでしょうか。
サルモネラ(S・E)対策が完璧である
サルモネラ・エンテロティデス(S・E)による卵の食中毒が増えています。このごろでは卵を汚染するだけでなく、広い範囲の食中毒の主役になっている感さえあります。いろいろな説がありますが、市販の卵10万個に1個は汚染卵だという新聞報道もありました。日本で一日に生産される卵は1億個近くになります。上記の割合で計算すると、日本全体で1,000個もの、S・Eに汚染された危険極まりない、しかも外観からはもちろん割ってみても、さらには食べてみてさえも正常としか思えない卵が産み落とされていることになります。このような汚染卵は取り扱いを間違えると、中の菌が食中毒濃度まで増殖し、場合によっては重篤な症状を引き起こします。患者の死亡も珍しいことではないようです。なんとも恐ろしいことではありませんか。
しかしご安心ください。平飼いによって生産される卵は、もともとサルモネラ菌に極めて汚染されにくい特性があるようなのです。何年か前、イギリスで卵によるサルモネラ中毒が大発生した際のことです。時の農業大臣が「わが国の卵は汚染されている」と宣言して大騒ぎになりました。狂牛病騒ぎのときも感じたのですが、こういった緊急の場合の発表に、少しもためらいが感じられません。これが日本だったらどうでしょう。薬害エイズの例を引くまでもなく、できるだけ隠し通そうとしたでしょう。「畜産業界の保護」、あるいは「パニックの防止」を名目に。そして死ななくてもよい死者を増やしたことでしょう。あの、薬害エイズのように。政治家がどちらを向いて仕事をしているか、よくわかりますね。イギリスの場合、ちゃんと国民のほうを見ているのですね。
当然のことながらイギリスの養鶏業界は、致命傷に近い大打撃を受け、農業大臣の首は飛びました。そして素早い対策が功を奏し、サルモネラ中毒はまもなく治まったのです。 この事件は多くのことをわれわれに教えてくれましたが、「自然卵に汚染はない」ことが分かったのもそのひとつです。そうなのです。あれほど大騒ぎをしていたイギリスで、平飼いの鶏舎からはひとつも汚染卵が出なかったそうなのです。
ただでさえ安全な「つまんでご卵」ですが、念は念を入れ、次のようなS・E対策を採っています。
バイオ製薬のS・Eワクチンを接種しています。この2000年に新発売されたワクチンは、使い続けるうちに汚染農場を清浄化するほどの効果がありますが、1羽あたり40円もするので、効果はわかっていても使用に踏み切れない農場も多いのではないかと思われます。しかし、汚染卵を絶対に出したくない緑の農園では、ためらうことなく導入しました。ちなみにこのワクチンを開発した社の博士に、平飼い鶏舎でS・Eの汚染卵が出ない理由についてお聞きしたところ、案の定「ストレスがないせいだろう」との答えをいただきました。博士の経験でも、ストレスをかけるとてきめんに汚染が進むのだそうです。いろいろな意味で、ストレスは諸悪の根源のようです。
薬剤を使わずに生産した卵である
緑の農園では、90日齢までに終わらせるワクチンや野外感染の防除のための踏み込み消毒液以外の薬剤を一切使っていません。ワクチンさえきちんと接種してやれば、ストレスの少ない私どものシステムにおいて、病気はほとんど発生しません。これは12年間の経験からも断言できます。そうはいっても、時には病気になることもないではありませんが、そのときでも薬で抑えようとしたりはせず、自然に回復するのを待つのです。そのための「自然卵養鶏」なのですから。
しかし、このことを一般の養鶏家がはたして理解してくれるでしょうか。うそをついていると思われなければいいのですが。
以上が「つまんでご卵」の生い立ちと特長です。これを一口に言えば「おいしくて、安全」ですね。本当によい卵を作ったものだと、自分で驚いているところです。